2024年4月23日火曜日

夏鳥とスマスコ

 今年は、ちょっと時間があったので、大都会の公園へ夏鳥を撮りにいってきました。


と、その前に、
同じ頃、近くの田んぼで、田起こしに集まる鳥を撮っていました。

そこで出会った男性と話をしてて、
「一眼に対してスマホの有利なところってなんですか?」
と聞かれました。
それに対して私は「ないですね」と”定型分”を答えました。
それでは身も蓋もないので「値段は安く済みますね」とつけ加えました。

男性:「解像度はいいんじゃないですか?」
ワタシ:「いやあ、一眼のほうがいいですよ。センサーの大きさが違いますから」
男性:「そうですか……値段が安いのと倍率と、あと遊べるってとこですか」
ワタシ:「そうですね、遊べるってのはありますね」

というやりとりがありまして。

そうか、“遊べる”か……。
iPhoneは写真や動画、スローといった撮影モードに加え、各種アプリで色々な撮影ができて遊べるし、機材をつくるのもそうだよな……と、その時は何かを気づかされるような感覚になりつつも、はっきりとはつかめずにいました。


さて、話を大都会の夏鳥に戻しましょう。
今年は夏鳥の渡りが早いとのことで、キビタキやオオルリがあちらこちらで飛び回っていました。
ただし、高い木の上のほうを。
立ち位置を微妙にズラしながら、枝と枝の隙間を縫って、なんとか枝が被らないように画面に収めます。
それでも高い木の上にいて距離があるので、iPhoneの倍率を2xにしないと大きく撮れません。
苦労しましたが、いろいろ楽しめました。

キビタキのオスは、もう、お腹いっぱいになるくらいいました。メスのほうが見たいと思うくらい。

オオルリは撮れるんだけど、空抜け気味ばかりで、結局、キレイな青色が撮れませんでした。

他にも、劇場のコマドリや、

コルリも撮れました。


今回、こうして、いつもとは違う大都会の公園で撮っていたのですが、やはり人が多いので冒頭の写真のように集団で撮ることが多くなります。
もちろん、私以外は、みなさんカメラです。
そんな集団の中で撮っていると、いろいろと聞こえてきます。

例えば、高い木の上のほうで何かがチョロチョロ飛びまわっています。

オオルリかキビタキか、はたまたムシクイか。遠くて空抜けの逆光ということもあり、はっきり分かりません。
カメラで撮っているおっちゃんたちからは、
「あれ何?」
「さあ?帰ってパソコンで見てみいへんと分からへんわ」
という会話が聞こえてきました。
そんな状況でもスコープ越しの私は、オオルリかキビタキか、オスかメスか把握できます。

また、上の写真のコマドリ劇場やコルリのポイントは常に人垣ができていました。
スコープなら、そんな人垣の後ろからでも余裕で撮れます。

オオルリがゴマダラチョウの幼虫を捕えたところに遭遇しました。

この動画の音声を聞いてもらえれば分かるように凄いシャッター音です。みなさん写真を撮っています。
また、どんな状況かもはっきりしていない様子も聞こえてきます。
私は、この場面を実際に見ながら動画で撮れて嬉しかったです。


と、まあ、こんなことがあり、今回の夏鳥ツアーは、

スマスコでよかった

と思いました。
こんなこと思ったのは、はじめてです。

何を撮っていたか分からなかったおっちゃんも、パソコンで現像したら私より鮮明な写真になったかもしれません。
それでも、鳥たちの様子を見ながら写真や動画を撮影できるのは楽しいです。

そう、楽しいんです。

そこで、田んぼで会った男性との話が思い出されました。
「遊べる」というのはスタンスなのかもしれない。
遮二無二に結果(=写真)だけを追うのでなく、その結果を得るまでの過程(=鳥たちの動きや仕草)も楽しむ。
ああ、そうか、これが一眼に対してスマスコの有利なところか。

いや、それは以前からおぼろげに分かっていたことだけど、今回「遊べる」という言葉が頭の中にあって、そこに「楽しい」という実感ができて、言葉と体験がつながり鮮明に浮かび上がってきたのです。


スマスコは楽しい


でも、万人にオススメできないというスタンスは変わりませんけどね。

2024年1月7日日曜日

2024 スマスコ、やってみたいですか?


こういう機材で撮っていると、近くで撮っているおっちゃんとかに珍しがられて声をかけられます。
そして、iPhoneに映し出された画面を見せると、その倍率と鮮明さにみなさんスゴイなあと驚かれます。

ただ、その時いつも感じるのは、スゴイとは言うけど、やってみたいと思うことは100%ないということです。
やってみたいと「言う」ではないですよ。
やってみたいと「思う」ことすらないのです。

100%は言いすぎだろうって?そうですね、1000人に1人くらいはいるかもしれません。
どうせスマホだし大した解像度じゃないでしょとか、飛びモノは撮れないでしょとか、カメラとはまったく別物で自分とは違う世界、といったようなことを言葉尻に感じます。(ていうか、言われてます)
また、昔デジスコをやっていて、その煩わしさを知っている人もおられます。

それでも世の中には、1000人に1人くらいはスマスコをやってみたいという人がいるようで。


CP+2023でのことです。

興和のブースで展示機のスコープにiPhoneを取り付けて試し撮りしていると、隣でスタッフに「スマスコやってみたい」と話している男性がいました。
えっ!?と驚き、その男性のほうを見ると、30か40代くらいのカジュアルな服装で、マニアックな印象は見受けられず、さらに驚きました。
そこにスタッフが「ちょうど、そちらの方がやってます」と、ワタシのほうに振ってきました。
iPhone 14 Pro Maxに自作のShiftアダプターで撮っていたワタシは『おいおい、コレ(14 Pro Max)、あんたたちの製品じゃできないやろ」と思いつつ、にこやかに「どうぞ」と男性にお見せしました。

男性は「うわあ、キレイですね」と感心していて、スタッフは「ほら、あそこの花がこんなに大きく写るんですよ」とか説明していました。
ワタシはなんだか騙しているような後ろめたさを感じつつ、話を合わせておりました。


大阪自然史フェスティバル2023でもスマスコをやってみたいという人がいました。

私がTSN-66を試していると、横のほうで男性がスタッフに「一番いいやつはどれですか?」と聞いていました。
スタッフ:「こちらですね。これがうちで現在提供できる最高のものです」とTSN-99を説明していました。
男性:「これ、スマホで写真とか撮れるんですよね?」
スタッフ:「ええと、機種によりますね。お使いの機種は何ですか?」
男性:「iPhone 12です」
スタッフ:「それなら、これで撮れます」(私の後ろのほうに行き、おそらくTSN-IP12を見せていたのでしょう)
男性:「でも、難しいんでしょ?」
スタッフ:「そうですね、ピント合わせが手動になりますから……」「三脚とか雲台もしっかりとしたものが必要になります」
と、こちらのスタッフは、まっとうな説明をしていました。


また昨年は、はじめて見ず知らずの人でスマスコをやっている人と出会いました。

やはりユニバーサルアダプターを使っていて、時間が経つとジワリジワリとズレてくるようで何度か位置を調整し直していました。
この時は、まだスマスコプレートが試作段階だったため、紹介できなかったことが悔やまれます。


そうか、実際にスマスコをやってみたいという人もいるんだなあ。


私にとっては当たり前になっているけど、自分のスマホの画面に鳥が大きく映し出されるのって、けっこうインパクトが大きいのでは?

とはいえ、実際にスマスコをしようとすると、現状では市販のユニバーサルアダプターに頼ることが多くなるでしょう。
そうなると、取り付けのわずらわしさや撮影の難しさなどから、ちょっと試してみて、その後、やらなくなるだろうことは想像に難くありません。
片や、ワタシの3Dプリントのパーツもハードルが高いだろうとは思っています。(だからといって、他にどうこうするつもりはありません)

もし「野鳥の写真が撮りたい」と言うのなら、私はミラーレス一眼などカメラで撮ったほうがいいと言います。スマスコは断固として勧めません。
カメラのほうが手楽にキレイに撮れます。

それでもスマスコをやってみたいという1000人に1人、いや、1万人に1人のため、その一助になれればと思い、ここに書き記している次第です。


スマスコ、やってみたいですか?


・iPhone 14 Pro Max メインカメラ1.2x(35mm版換算1860mm)

・iPhone 14 Pro Max メインカメラ2x(35mm版換算2880mm)

・iPhone 14 Pro Max 望遠カメラ3x(35mm版換算4620mm)

2023年12月31日日曜日

iPhoneでクローズアップフィルターを使う

 クローズアップフィルター。
Kenkoでは『クローズアップレンズフィルター』、マルミでは『MACROフィルター』と商品名は違うのですが、レンズの最短撮影距離を短くするフィルターです。
マクロレンズのように拡大するわけではなく、フィルターをつけていない状態より近づいて撮れるため、結果的にアップで大きく撮ることができます。

クローズアップフィルターには+2とか+4といったように数字がついていて、数字が大きくなるほど近づいて撮れます。
この数字については、Kenkoのサイトに詳しく説明されています。

クローズアップフィルターは、Kenko、マルミ共々、30mmはおろか37mmも販売されていませんが、Amazonでは+1 / +2 / +4 / +10の4枚セットになった製品が安値で売られています。(しかもスマホ取り付け用クリップ付き)

私は中古カメラ屋さんで37mmの+2 / +4 / +10の3枚を購入しました。

スマートフォン用フィルターホルダーに30-37mmステップアップリングを取り付けて撮影します。

この3枚をiPhoneに取り付けて、どれだけ変わるか見てみましょう。
と、その前に、iPhoneにはマクロモードがあるだろうって?
はい、しかしながらiPhoneのマクロモードは0.5x超広角カメラを使ったデジタルズームです。1xのマクロモードはまだ許容範囲としても、2x、3xでは画質の劣化が著しいです。
また、後述のクローズアップフィルターを使った写真と比べてもらえばわかりますが、背景がボケません。(それはそれでいい場合もありますが)

それでは、iPhoneの倍率ごとにクローズアップフィルターの効果を見てみましょう。
以下、撮影にはiPhone 14 Pro Maxを使用。
まずはメインカメラ1x

メインカメラ2x

望遠カメラ3x


次にVixen アルテスでクローズアップフィルターを使ってみました。

アルテスではメインカメラ1xはケラレが大きくて使えないので2xからです。
アルテス X iPhoneメインカメラ2x

アルテス X iPhone望遠カメラ3x

2x、3xのどちらも、+2を見るとフィルターなしの状態より小さくなっていますが、これはアルテスのピント位置を最遠端で撮影しているからです。+4、+10も同様に最遠端で撮影しています。
+2でも最短で撮影すると、ここまで寄れます。

+4がアルテスには、ちょうどいいクローズアップ具合です。
+10は無理!ほんのわずかなブレでピント位置がズレて、そのままピントが行方不明になってしまいます。


iPhone単体でも、ヒラタアブのような小さな虫がここまで寄って撮れます。(逃げなければね)


アルテスで虫を撮っていると、あと一歩でも寄りたいということがありましたが、クローズアップフィルターがあれば、それが可能になります。